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とにかくやりたいことをやってみる。
そこから、きっとワクワクが生まれる。

NPO法人二枚目の名刺 代表・ファウンダー 廣 優樹

掲載日2018年01月15日

「会社」「地域」「コミュニティ」など、既存の枠組みからの「越境」の必要性が指摘されている。
私たちが自由に、そしてしなやかに活躍することができる社会への想いとは―。

2枚目の名刺を当たり前の選択肢に

丸井グループイメージ

“2枚目の名刺”。日々の暮らしや仕事のなかで、自分の価値観をどう表現し、活かしたらいいのかを意識している人たちにとって、とても興味を惹かれる言葉である。

そんな魅力的な名を冠したNPO二枚目の名刺は、会社人として持つ1枚目の名刺のほかに、組織や立場を超えた社会人として2枚目の名刺を持ち、双方で活躍することが当たり前の選択肢となる社会の姿を描いて、2009年に設立された。

「初めての子どもが生まれたとき、自分がこの先過ごす数十年だけでなく、子どもたちが暮らす将来を見据えて、さらに30年、50年先の未来へ想いを馳せるようになったんです。そして、将来は今しか創ることができなくて、今何かやらなければ将来きっと後悔する。だから、『こうなったらいいな』、『こんな世界を見てみたい』と思うことがあれば、今アクションしようと思ったんです」。商社で働きながらNPO二枚目の名刺の代表を務める廣氏は設立当時の心境をこう振り返る。

そんな廣氏はイギリス留学中に取り組んだ農業プロジェクトで訪れたベトナムで、これまで自身が身を置いていた金融の世界から飛び出し、会社の名刺を使わずに、「廣 優樹」としてプロジェクトに向き合い、うまくいくことも、思うようにならないことも経験した。そして、プロジェクト期間中の予想もしないようなさまざまな人々との出会いを通じて、「会社で働く以外にも自分にできることがある」と実感。同時に、今までの枠を一歩踏み越えることで、「NPO二枚目の名刺」の活動をスタートさせた。

NPO二枚目の名刺の活動は大きく2つ挙げることができる。1つは2枚目の名刺を持ちたいと思っているが躊躇している人に対して「2枚目の名刺を持つきっかけを提供する」こと。もう1つは行政や企業に働きかけ連携することで、既存の社会の枠組みに変化を仕掛け「2枚目の名刺を持ちやすい雰囲気をつくる」ことだ。小遣い稼ぎのための副業や、自分のためだけの趣味とは異なり、社会にベクトルが向いた2枚目の名刺を持つからこそ、周囲から応援してもらいながら社会の変化を生み出し、自身の変化も生み出す。そして、さらには1枚目の名刺にも還元され企業の変化を生み出すことができる。社会人、NPO、企業の変化を同時に実現する、2枚目の名刺を当たり前の選択肢にすることが、NPO二枚目の名刺のミッションだ。

NPO二枚目の名刺では、これから2枚目の名刺を持ちたいと思っている社会人に、「2枚目の名刺を持つきっかけ」として期間限定で2枚目の名刺を持つNPOサポートプロジェクトを推進している。

このNPOサポートプロジェクトは、さまざまな業界の社会人が、NPOなどの団体とともに、団体が取り組む事業の開発、事業展開、またそれらを支える組織体制の構築などに取り組むプロジェクトだ。NPO二枚目の名刺は、Common Room(コモンルーム)と呼ばれるオープンなネットワークイベントを定期的に開催し、同じ意識をもつ社会人と社会をつくる活動に取り組む企業・団体との出会いの場を提供するとともに、プロジェクト進行をサポートする役割を担っている。実は、このプロジェクト設計を行っている人々の多くが、もう1つの仕事をしながら2枚目の名刺を持って活動するメンバーでもある。

社会貢献から人材育成・イノベーション創出へ
~企業も注目するNPOサポートプロジェクト~

丸井グループイメージ

このNPOサポートプロジェクトは、単なる社会貢献プロジェクトという訳ではない。「ここ数年、企業が人材育成の場として、またビジネスイノベーション創出の場として、社員をNPOと協働するプロジェクトに派遣したいという声が広がっている」と廣氏は言う。

多様なバックグラウンドを持つ社会人とチームを組み、“いつもの”組織のやり方から離れ、会社の肩書に頼らずに自分の名前で取り組むプロジェクト。本気でプロジェクトに向き合うことでもたらされる、刺激と変化こそが、企業が注目している人材育成効果だ。

●ギャップ ジャパンがNPOサポートプロジェクトをリーダーシッププログラムとして採用

ギャップ ジャパンは、「体験型リーダーシッププログラム」として3つのNPO団体へ4か月に渡って社員を派遣。それぞれのNPOが抱える課題と向き合い、経験を積むことでプログラム終了後には「参加者のコミュニケーション方法やリーダーシップスタイルが変わった」という声が現場から聞こえるようになった。ギャップジャパン人事からは、「社会に向き合い価値を生み出しながら、その裏でたくさんもがいて、たくさんの前向きな失敗を経験してほしい」との期待が寄せられている。

NPOが対峙する社会課題は、人の満たされていないニーズとも言い換えられる。「こうした人のニーズに触れることが、従来の事業に新しいつながりをもたらし、ビジネスイノベーションに発展していく可能性があります」(廣氏)。つまり、社会課題の現場は、ソーシャルイノベーションの起点であるとともに、ビジネスイノベーションの起点でもあるのだ。普段の組織から越境することで、予想もしないようなアイデアが生まれ、形になっていくことも期待できるという。

●丸井グループがLGBTの人々ために浴衣を販売

丸井グループの社員がLGBT(性的少数者)とその支援者で構成されるNPO法人とのNPOサポートプロジェクトに参加。さまざまな経験をするなかで「LGBTの方の中には、自分のサイズに合う浴衣がない人も少なくない」という声を耳にする。女性柄で大きなサイズ、男性柄で小さなサイズの浴衣がないのだ。そこで、丸井グループ社員がその声を会社に持ち込んだところ、LGBTをはじめとしたダイバーシティへの取り組みを推進していた丸井グループのベクトルと合致し、すぐさま実際に浴衣のサイズバリエーションを増やして店頭販売され好評を博した。

新しい出会いや発見が、2枚目の名刺のかけがえのない財産

丸井グループイメージ

二枚目の名刺の活動を語るなかで、廣氏が重ねて口にするのは「とにかくやってみてほしい。そこからきっとワクワクが生まれる」という言葉だ。「会社や組織、コミュニティなどに捕らわれず、純粋に『自分はこれがやりたいんだ』ということを見つけて実践してみてください。すると同じ想いをもった人たちとの出会いがあったり、サポートしてくれる人が現れたり、とにかく予想もしなかったような何かが起こるんですよ」(廣氏)。

●ミッションを中心にNPO、企業、行政が既存の組織の枠を超えて始まるプロジェクト

2017年、渋谷区原宿を舞台に、小学生が地域の大人と対話し、町の課題を見つけ解決策を提案、実現に取り組むプロジェクト「Social Kids Action Project(SKAP)」が始動した。「子どもが本気で社会と向き合い、大人と協働して未来を創る、そんな社会を見たい」というミッションに共感した数人からスタートした企画だ。共感は瞬く間に広がり、「子をかすがい」にしながら、原宿の企業、地域(町会・商店街)、行政(渋谷区)が参画。1-3月に行ったトライアルから4か月後には正式にNPO二枚目の名刺と放課後NPOアフタースクール、そしてKids Experience Designerの植野氏が主催となり、同業を含む複数の会社が協賛するという従来の常識では考えられない形での協力関係が地域に生み出された。

●ノウハウの活用が、メンバーの勤める企業との橋渡しを生む

NPOサポートプロジェクトに参加し、この経験を自分の会社でもっとたくさんの同僚に経験させたい。そんな思いを持ち始めたメンバーがノウハウを持ち帰り、社内でCommon Roomを開催し、NPOサポートプロジェクトを実施した。イノベーションを渇望するその企業でその取り組みは注目され、自身も業務の傍らイノベーション創出も意識した社内での取り組みに時間を割くことを会社から認められるようになる。これは、まさに社内2枚目の名刺としての活動が本業に変革をもたらした事例といえるだろう。社外での取り組みを社内に取り込めることが2枚目の名刺の真骨頂でもあり、そして「そのようなメンバーがまた2枚目の名刺を会社内に伝道師として広げていっているのです」(廣氏)。

「実践してみたら予期せぬ結果が生まれた、本業へのプラスの影響があった、こんな感動が得られた、ネットワークが広がり新しい出会いが生まれた。そんな風にNPO二枚目の名刺メンバーが“2枚目の名刺”を体現し、これまでになかったようなストーリーを生み出していっています」(廣氏)。

選択肢が豊かになればライフプランも多彩に広がる

当サイトが提唱する『Smart Join Style』とは、1人の個人が、複数の仕事や複数の居住地、複数のコミュニティ等にしなやかに所属することである。

まさにこのスタイルを実践する廣氏にとって『Smart Join Style』とは何だろうか。

「私は自分の価値観を大切にしながら、仕事でもプライベートもオーナーシップをもって、つまり常に人生の主役が自分であることを意識していくことが、豊かな人生につながると考えています。一つのことに没頭するという選択もあります。同時に複数のことをやりたいと思ったとき― それは会社、地域、それ以外のコミュニティ、いろいろありますが― それが当たり前の選択肢となっていれば、組み合わせも多彩になり、人生はさらに自由に描くことができるようになるはずです。そのなかから自分にとってよりよい組み合わせを選択していくことが、私の『Smart Join Style』だと思います」(廣氏)。

今後は「こんな社会にしたい」「こんな人生を送りたい」と考え、マイミッションを大切にして能動的にアクションを起こす人々がさらに増えていくと予想される。そんな“想い”の集積地であるNPO二枚目の名刺と廣氏の活動は、これからも新しいライフスタイルを創出していくことであろう。

プロフィール

NPO法人二枚目の名刺 代表・ファウンダー 廣 優樹

慶應義塾大学卒業、Oxford大学Said Business School MBA、2002年日本銀行入行、金融機関・市場モニタリング、経済調査等を担当。この間、05~07年に、経済産業省に出向し金融制度設計に取り組む。14年より、商社にて食料部門の海外事業開発・投資を担当。本業で持つ1枚目の名刺のほかに、09年二枚目の名刺立上げ(11年NPO法人化)、商社勤務のかたわら自らも2枚目の名刺としてNPO代表を務める。4児の父。

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