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地域課題解決プロジェクトへの参加を通じて、
次世代を担う変革リーダーの育成を推進。

富士ゼロックス株式会社

掲載日2018年04月16日

パラレルキャリアには人材育成や能力開発の効果があるとされる。そのような効果に着目し、地域課題解決とスキルアップを両立させている企業と社員の事例を紹介する。

地域企業の課題解決プロジェクトが
参加企業の人材育成を担う

昨今、経営学者であるピーター・ドラッカーが著書『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』(ダイヤモンド社刊)等で提唱している「パラレルキャリア」に注目が集まっている。このパラレルキャリアは、端的に言えば「本業を持ちながら、第二のキャリアを築くこと」で、収入(お金)を得ることが主目的ではなく、自身の能力開発や社会貢献が主な目的という文脈で理解されることが多い。

このような社会の潮流を背景に、企業の人材と地域の課題を結びつけ地域の活性化を実現しようとする動きも現れている。岐阜県を拠点として東海エリアを中心に活動を続けるNPO法人G-netでは、地域企業が取り組む課題解決プロジェクトに、別の企業に所属する社員をマッチングさせて3か月間の活動を行う『シェアプロ』を企画・展開している。いわば、期間限定で「パラレルキャリア」の実践ができるプロジェクトだ。地域企業にとっては自社の課題解決を外部人材の力を活用して推進することができ、参加者にとってはプロボノとして課題解決に資するだけでなく、新たな事業推進経験や経営スキルの習得につなげられることが大きなメリットだ。

この『シェアプロ』に参加するには、G-netが発信するプロジェクトの公募情報に自らエントリーするのが一般的であるが、企業が所属する社員にその情報を提供し、希望者を企業として募り、参加させた事例がある。コピー機・プリンターなどのオフィス機器を中心に、事業を全国に展開する富士ゼロックス株式会社(本社:東京都港区)である。

富士ゼロックスでは、現在、次世代の経営を担う変革リーダーの育成を推進しているところであるが、その対象となっている社員に『シェアプロ』の情報提供を行い、参加を希望した社員のうち28名が、2018年1月から3か月間に渡りプロジェクトに取り組んでいる。

今回はその28名の参加者のなかから2名にフォーカスし、活動内容を紹介する。

自社ブランド開発プロジェクトで
自分の強みと進むべき道を再認識

入社8年目を迎えた田中良憲さんは、神奈川の開発拠点で入社以来コピー機の設計・開発を行っている。そんな田中さんが今回の『シェアプロ』で参加した企業は、愛知県碧南市にある金属部品塗装を中心とした工業塗装を行う藤塗装工業株式会社である。

藤塗装工業が依頼したプロジェクトは、長年培った金属塗装・加工技術を活かした金属板を用いるオリジナル商品の開発だ。

藤塗装工業での活動風景

「私は将来、今までになかった新しいデバイス(※1)の開発をイチから行うことが目標なんです。そのために企画やマーケティングから商品開発、販路開拓まで、商品化に至る流れを実体験できる場と考え、藤塗装工業のプロジェクトに参加しました」(田中さん)

富士ゼロックスからこのプロジェクトに参加したのは、田中さんを含めて3名。皆一様に現場の“スピード感”に驚かされたという。

「富士ゼロックスでは、例えば試作品をつくるときは、発注書を書いてから承認を得るまでに時間がかかる事は当たり前だと思っていましたが、藤塗装工業では『やってみましょう!』とその場ですぐ決裁がおりるのです」(田中さん)

そのためプロジェクトメンバーで商品開発に熱が入り、つい試作品をつくりすぎてしまうこともあったという。勤務先やつくる製品は違っても、それぞれのメンバーの“モノづくり”に対する想いに変わりはないのだ。

試作品の一例

このプロジェクトは、商品の企画開発から販路開拓までをすべて自身で行わなければならず、またタイトなスケジュールであるため、部分的な業務ではなく、プロジェクト全体を俯瞰で見ながら仕事を進めなければならない。田中さんは、この経験により、日常の業務でも物事をスピーディに決めていくことや、スケジュールを自身でコントロールしていく等が活かされているという。

「私は大学で機械工学を専攻し、今までずっとモノづくりに携わってきましたが、今回の活動を通して改めて自分の強みはモノづくりにあると実感しています。今後「モノ」から「コト」へと仕事のトレンドが移行していくなかで、自分の強みを製品以外にも活かせるようになりたいです」(田中さん)

※1:コンピュータに接続して使用する装置・設備のこと。

メンバーの皆さんと

田中良憲

立命館大学大学院創造理工学専攻機械システムコース修了。2010年、富士ゼロックス株式会社入社。現在、メカニカル開発統括部 メカニカルPF開発部5Gに所属。
将来は、「事務機器に並び新たな富士ゼロックスの柱となる事業を創出したいと考えています。シェアプロのような実践活動の場を通じてビジネスマインドを培い、技術と事業経営の両面を担える人材となります。」と話す。

プロモーションプロジェクトへの参加が
新鮮でかけがえのない気付きを生む

さまざまな用途に用いるレインウェアやエプロン(業務用前掛け)を製造する船橋株式会社(愛知県名古屋市)に参加したのは副島可織さん。副島さんは普段、富士ゼロックス福岡株式会社で約150社の顧客を担当し、営業活動を行っている。

「何よりも舟橋社長の商品に対するアツい想いに魅かれたんです。そして社長のもとで業務をサポートする私と同年代の社員の方々の姿をみて、素直に『ここで学びたい、吸収したい』と思ったんです」。副島さんはプロジェクトを選択した理由をこう語る。

船橋での活動風景

今回のプロジェクトは、食肉加工の現場で着用される合羽型エプロンの商品プロモーション。年間の販売目標を掲げられたなかでのスタートだった。

「この販売目標を達成するためには、約3か月のプロジェクト期間内での活動だけでなく、このプロジェクトが終了した後に船橋に何を残していけばいいのか、それを考えるのも大きなミッションだと考えるようになりました」(副島さん)

副島さんを含むメンバー6名は、互いに協力しながら徹底的に業界分析、市場分析を行い、顧客へのアプローチ手法や販売方法などを検討した。その作業は時には深夜に及んだこともあったという。

商品プロモーションの立案に加え、プロジェクトの最後には東京ビッグサイトで開催される展示会への出展が予定されており、この展示会の成功を目指して、一丸となって取り組んでいる。

合羽型エプロンの製造風景

「このプロジェクトに参加して感じたのは『いい意味で役割がない』ことです。このプロジェクトでは、商品を売るためには何でもやるのが当たり前なんですね。普段の私たちは、営業は営業、開発は開発と業務の範囲が決まっています。もちろんその役割を遂行することも大切ですが、向かうゴールが同じであれば、部門間の垣根を取り払う必要があることに気づき、チームとしての働き方を学びました」(副島さん)

今回のプロジェクトを通して副島さんは、日常の業務でも自分が何を目標とし、何のために仕事をしているのかを常に意識するようになったという。

「『私って意外にこういうことができるんだ』と今まで気付かなかった自分の強みを認識できました。プロジェクト終了後には『変わったね。成長したね』と言ってもらえるようになりたいですね」(副島さん)

メンバーの皆さんと

副島可織

福岡大学人文学部英語学科卒業。2013年、富士ゼロックス福岡株式会社入社。現在、DS営業2部2Gに所属。
将来は、「営業としてお客様経営者と高い視座でも対話ができるよう、これからもシェアプロのような経験を積みたい。また社内の代表としてお客様と接するため、あらゆる部門の方々の思いを馳せて営業活動ができる人材になりたい。」と話す。

パラレルキャリアを通じて、
広い視野をもった人材の育成に取り組む

取材を行った時点でプロジェクトはまだ約60%程度の進捗であったが、「大きな手応えを感じています」と営業生産性強化部 戦略グループ(※2)の三木祐史さんは語る。三木さんは、富士ゼロックスの営業部門の育成を担う立場にある。

さまざまなメーカーが社内の縦割り組織の弊害を課題として掲げるなか、富士ゼロックスではその問題を打破するため2017年4月に事業部制を導入している。
しかし、事業部制を導入後、バリューチェーン全体を見渡せる人材の育成が急務であることが浮き彫りとなった。そこで、新たな価値の創出に挑戦し、将来の事業経営を担うための人間力向上を目指す若手人材の育成を組織横断的に行うことになり、そのプログラムを企画・運営する事務局に加わることになった三木さんが、『シェアプロ』をプログラムに組み入れることを提案した。

三木祐史さん

「『シェアプロ』は、次世代リーダー育成プログラムの中の一部分であり、参加するかどうかも個人の意思に任せたものではありますが、実在の中小企業経営に携わる経験は、次世代の事業経営を担う人材として得るものは大きいのではないかと期するものがありました。この『シェアプロ』の活動は現在進行中でありますが、プロジェクトに取り組む様子を見守っているなかで、社外のさまざまな価値観に触れる『他流試合』を経験することで、参加先の企業への共感だけでなく、当社に対する想い―当社を成長させよう、当社で成長しようという想い―というものも強くなってきていることが感じられたのが、現段階での嬉しい変化の一つです」(三木さん)

富士ゼロックスだけでなく、現在の日本の企業の多くは、CSR活動(社会的責任に対する活動)やESG(環境・社会・企業統治)に対する意識が高まっているものの、パラレルキャリアやプロボノ活動への企業全体としての取り組みという点では、まだ議論が深まっていない状況だ。

「今回は28名の社員が『他流試合』に挑戦してくれましたが、今後はより多くの社員に、そして一人ひとりが柔軟に、自由に「Smart Join」できるような風土が醸成され、社会にも自分にもいい影響を与えられるようになるといいと思っています。そして、それが所属する企業にも還元される良いスパイラルが生まれると嬉しいですね」(三木さん)

※2:取材時。現 営業生産性強化センター 開発展開グループ(2018年4月1日現在)

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