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生まれ育った土地に対するあふれる愛情が、
東京で新しいコミュニティを創出する原動力。

IT企業勤務 木原 杏菜

掲載日2018年07月17日

「鹿児島が大好き」「鹿児島のことを多くの人に知って欲しい」。シンプルだが、熱く強い想いを胸に、活動を続ける姿から見える郷土愛の向かう先とは。

故郷を離れてから、日に日に膨らむ
鹿児島への想いと愛情

現在NHKで放送されている大河ドラマ『西郷どん(せごどん)』。このドラマでは、幕末の時代に明治維新の立役者となった西郷隆盛の生涯が描かれている。その西郷隆盛の生まれ故郷でもある鹿児島県は、九州地方の南部に位置し、県本土のほかに種子島や与論島からなる薩南諸島、奄美大島をもつ奄美群島などを有している。
また現在も活発に火山活動を続ける桜島や、世界遺産に認定されている屋久島などがあり、数多くの観光客が足を運ぶ。

そんな鹿児島を故郷にもち、あふれんばかりの郷土愛を胸に、東京で暮らす女性がいる。大手IT企業に勤務する木原杏菜さんだ。

「私は鹿児島県鹿児島市に生まれて、高校卒業まで鹿児島で育ちました。その後大学進学を機に上京し、東京で就職もしたのですが、大学生のときから今にいたるまで、鹿児島愛が毎日毎日膨らむ一方なんですよ」と木原さんは笑う。

「高校生のときは鹿児島が狭い世界に感じて、『早く出たい!』と思っていたんです。でもいざ上京して離れてみると改めて『鹿児島って本当にいいところなんだな』と感じるようになりました。東京での日々を過ごすなかで、育った環境に感謝する想いや鹿児島に対する愛情がふつふつと湧いてきたんです」(木原さん)

東京と鹿児島を結ぶ新しいコミュニティ
『関東鹿児島若者会(りあるじゃっど会)』の設立

木原さんは大学卒業後「いいもの、好きなものをより多くの人に広めたい」という想いから広報の仕事を選び、PR会社勤務を経て、IT企業の広報部で基幹事業の広報活動を行っている。

現在の仕事に就いて約5年が経ち、広報のスキルや経験を蓄積していくなかで、改めて自分の心にある鹿児島の存在に気付き、「鹿児島を広報したい」という気持ちが大きくなっていったという。

「東京で働けて、自分のやりたかった仕事にも就けて、ようやく生活基盤が落ち着いてきたときに、自分を育ててくれた鹿児島に恩返ししたくなったんです」(木原さん)

そのために木原さんは、まず“自分の知らない鹿児島を再発見”するため、幼少期には訪れたことのなかった場所を頻繁に訪れているという。

「安いチケットを手配してこの1年で4〜5回は鹿児島の地に赴きました。先日も徳之島のコーヒー農家の方に会い、豆摘みを体験させてもらいました。今まで知らなかった土地や離島を訪れる度に新しい出会いと発見があるんです」(木原さん)


徳之島のコーヒー農家での豆摘み体験

木原さんの鹿児島愛の発露としての、もうひとつのアクションは「東京で新しいコミュニティをつくる」こと。

「東京で暮らす同郷の友人、そして鹿児島で暮らす友人らとも交流を深めるなかで、『東京には鹿児島を愛する若者の受け皿がない』ことが話題になったんです。そのことがきっかけで、地域と東京を結ぶ活動をしている方のお話を聞きに行ったりしていたのですが、ある人から『小さいことでもいいからとりあえずやってみることが大事』というアドバイスをいただき、2018年初めに『関東鹿児島若者会(りあるじゃっど会)』を立ち上げました。もともと社外でのコミュニティ活動やNPO活動の経験はまったくなかったのですが、東京と鹿児島を結ぶコミュニティがあれば新しいことが起こせるんじゃないかと思ったんです」(木原さん)

「企業の広報担当」からいつかは「鹿児島の広報」へ
木原さんのチャレンジは続く

現在『関東鹿児島若者会(りあるじゃっど会)』はFacebookを活用し、同じ意志をもったメンバーを集める活動が中心となっているが、設立を知った別の団体からすでに協働でイベントを実施する計画も挙がっているという。

「まだまだ立ち上げたばかりなので、現在は鹿児島の自治体が東京で主催するイベントに参加するなどして、ネットワークの拡充に努めています。これから色々なことにチャレンジしていきたいと思っていますが、東京で鹿児島にゆかりのある若者を集めていると知っていただいた方々から『何かできるんじゃないか』と問い合わせをいただく機会も多く、その反響に驚いていますし、可能性を感じています」。


幅広い世代の人々が集う『関東鹿児島若者会(りあるじゃっど会)』

活動を続けるなかで木原さん自身には「私がやりたくて始めたことが果たして人のために役立っているのか」という疑問がわき上がってくることがあるという。

「そんなときメンバーから『この会があったから、より地元への関心が高まった』と言ってもらえたり、これまで鹿児島には縁がなかった東京生まれ東京育ちの方から『私にも鹿児島のような故郷が欲しい』と言ってもらえたり。『次の旅行先は鹿児島にしてみます』とか『この前薩摩料理を食べに行きました』という言葉の一つひとつがやりがいになっています。そしてこのような輪が『関東鹿児島若者会(りあるじゃっど会)』を中心にしてこれからもどんどん大きく広がっていって欲しいですね」(木原さん)

そんな木原さんに「今後の夢はなんですか」と問いかけると「いつかは仕事として鹿児島の広報をしたい」という言葉が返ってきた。

「豊かな自然や、おいしい食べ物など鹿児島のいいところはたくさんありますが、何よりも一番の魅力は“人”だと思っています。『関東鹿児島若者会(りあるじゃっど会)』を通じて薩摩隼人と薩摩おごじょの人柄、人情味をできるだけたくさんの人に知って欲しいですね(笑)。そしてiターンやUターン、移住とまではいかなくても、東京をはじめとした都市部と鹿児島の間で人やビジネスの交流が生まれるきっかけづくりに、微力かもしれませんがまずは個人の活動から寄与していきたいと思っています」(木原さん)

東京に居ながら鹿児島の情報を発信し続けることが
地方活性化のサポートに

鹿児島だけでなく、全国の地方自治体では人口減少、住民の高齢化問題などが共通の課題として挙げられ、各地方自治体で人口回復、産業振興を目指したさまざまな取り組みを実施し、一定の成果を上げている。

一方で、東京から移住する予定、または移住を検討したいと思っている人が約40%を占めるという調査結果があるなか(※1)、「働き口が見つからない」ことや「日常生活の利便性・快適性」などを理由に都市部での暮らしを続ける人も多数存在し(※2)、現実的には移住に踏み切れない若者が多いのも実情であろう。

そのような状況下あって、木原さんのように東京に生活基盤をもちながらも「少しでも愛する故郷のことを知って欲しい、好きになって欲しい」という情熱のもと、情報発信を続ける人物の存在は、地方活性化の一助になるであろう。
このような活動が交流人口、関係人口増加の好例としてフォーカスされるよう、木原さんの今後の活動に期待したい。

※1「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」まち・ひと・しごと創生会議 2014年調べ
※2「地方移住に関する意識調査」株式会社トラストバンク 2017年調べ

木原 杏菜

雄大な桜島と錦江湾を望む鹿児島市内の団地に生まれ育つ。市内の高校卒業後、大学進学のため上京。大学時代も鹿児島県民のための学生寮に住む。都内の鹿児島料理屋を巡るのと、西郷さんのグッズ集めが趣味。好きな鹿児島焼酎(かごちゅう)は中村酒造場「なかむら」のお湯割り。東京で感じられる鹿児島の情報を発信するウェブメディア「リトルかごしま(http://litokago.com/)」を準備中。

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