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地方都市の行政と、大都市に暮らす人々が連携し、
新たな情報発信型施策で地域活性化を目指す。

鯖江“育職住”プロジェクト 福井県鯖江市

掲載日2018年10月15日

大都市部に居を構えながら地域と深く関わる“関係人口”というスタイルが注目されている。福井県鯖江市が取り組む、関係人口と連携したプロジェクトについてレポートする。

「ものづくりのまち」鯖江市の
新たな取り組み『鯖江“育職住”プロジェクト』

プロジェクトメンバーの皆さん
(前列左側から山本氏、牧田氏、帖佐(ちょうさ)氏、後列左側から久冨氏、赤松氏)

プロジェクトメンバーの皆さん
(前列左側から山本氏、牧田氏、帖佐(ちょうさ)氏、後列左側から久冨氏、赤松氏)

日本海側に面し、本州の中部に位置する福井県。今回レポートする鯖江市は、その福井県のほぼ中央に位置し、東西約19.2km、南北約8.3kmにわたり、多くが平坦地で占められている人口7万人弱(注:69,428人2018年9月1日現在)の地方都市である。

鯖江市は眼鏡フレームの国内生産シェア約95%を誇る産地として特に有名であり、その他にも1500年の歴史をもち、業務用漆器の約80%のシェアを占める越前漆器や、繊維王国・福井県の中核を担う繊維産業など、「ものづくりのまち」として全国に名を馳せている。

また、長年に渡って雇用創出や子育てにやさしい環境整備に努めており、その結果、福井県内では唯一人口が増加し続けている市である。(2017年10月1日現在『福井県の推計人口』福井県調べ)

「しかし近年では求人・採用難が続いています。特に地場産業における若い人たちの人材確保が年々厳しくなっているのが実情です」(鯖江市商工政策課 澤村さん(トップ写真後列右))

そこで鯖江市では、「都市部で暮らす若者にもっと鯖江市のことを知ってもらう」ために、ウェブサイトの新設や、実際に鯖江市を訪れてもらうツアーなどを行う『鯖江“育職住”プロジェクト』を企画し、このプロジェクトに関係人口(※)として、参加を希望する人材を幅広く募ることとした。

「東京と大阪での説明会の実施や、ウェブサイトで告知を行った結果、ありがたいことに数多くの応募をいただきました。その中から今回の『鯖江“育職住”プロジェクト』のメンバーとして5名の方に参加していただくことになりました」(澤村さん)

※関係人口:移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指す。(総務省 『関係人口』ポータルサイト より)

第1回全体会議ではプロジェクトメンバーとともに
鯖江市の主要スポットを巡る

2018年8月、初めてプロジェクトメンバーが一堂に会して全体会議が行われ、その後ツアーでの訪問が予定されている市内各施設の視察が行われた。

最初に訪れたのは河和田アートキャンプの拠点となっている『co-minka(古民家)』だ。
この河和田アートキャンプはアート活動をコンセプトとしたまちづくり事業で、主に関西圏域の大学生が夏休みを利用して、約40日間にわたって『co-minka』で寝食を共にしながら、地域住民と芸術を通じたさまざまな活動を行っている。

『co-minka』全景

河和田アートキャンプの活動概要を聞くメンバー

『co-minka』全景

河和田アートキャンプの活動概要を聞くメンバー

2004年に発生した福井豪雨による水害の災害支援活動がきっかけでスタートした河和田アートキャンプは、今年で14回目を迎え、この河和田アートキャンプ出身の移住者も数多く生まれている。

また、都市部から移住し、鯖江市内で起業しているデザイン会社や、若い職人が働く越前漆器店などを訪問し、事業の内容や鯖江市の魅力についての話を聞き、メンバーは熱心に耳を傾けていた。

あるメンバーに鯖江市の地場産業の印象を訪ねると「どの現場に行ってもそこで活動する若者や移住者の方がキラキラと目を輝かせているのが印象的でしたね」と語ってくれた。

この他にも鯖江市の特産品を見学・購入できる観光スポット「めがね会館」や「うるしの里会館」を見学した後、牧野鯖江市長を表敬訪問し、この日の日程は終了した。

鯖江産地のめがねが一堂に集められためがね会館

越前漆器の制作体験もできるうるしの里会館

鯖江産地のめがねが一堂に集められためがね会館

越前漆器の制作体験もできるうるしの里会館

鯖江市出身で現在は神奈川県で暮らす山本さんが
10年以上の時を経て鯖江市のプロジェクトに参加

山本剛史さん

今回の『鯖江“育職住”プロジェクト』メンバー5名のうち、神奈川県から参加しているのが山本剛史さんだ。山本さんは放送局勤務を経て、現在は出版社に勤務している。

もともと政治と地域活性化について興味があったという山本さんは大学・大学院を通してその両方を学んだという。

「放送局勤務時代には政治部で記者をしていました。そのときにある程度、政治や政治家の方々と直接関わり、向き合うことができたと思っています。放送局で7年間勤め、このまま政治を極めるのか、もう一つの興味の対象である地域活性化についても知見を広げるのかを悩んだ末、30代のうちにやりたいことをやってみようと、ローカルやソーシャルをテーマにした雑誌の編集者として出版社に転職しました」(山本さん)

そんな山本さんが今回のプロジェクトを知ったのは偶然だったという。

「実は私は鯖江市出身で高校までずっと地元で育ちました。上京後はあまり地域に関わる活動に携われなかったのですが、今回私が経験してきたことで故郷に恩返しができるチャンスかもしれないと思い、応募しました。本当にたまたまインターネットで知ったのですが、こうしてメンバーに選ばれたことをうれしく思います」(山本さん)

鯖江市を離れて10年以上を経て、改めて故郷の現状を知りたくなったという山本さん。

「今日は色々なところを見学し、お話を聞けて今まで知らなかった故郷をかいま見ることができて、本当に楽しかったですね。私も若い人たちの熱に触発されました」(山本さん)

「このプロジェクトでの活動を楽しみにしていますし、プロジェクト終了後も何らかの形で鯖江市に関わっていけたら」と語る山本さんが、いずれ鯖江市の関係人口として地域活性化のキーマンになるのかもしれない。

 

牧野鯖江市長と歓談する山本さん

『鯖江“育職住”プロジェクト』を通じて
一人でも多くの方に鯖江市のことを知って欲しい

今回の『鯖江“育職住”プロジェクト』全体会議を経て、鯖江市ではプロジェクトメンバーとともに2回の『さばえ育職住ツアー』開催と、ウェブサイト『さばえの仕事図鑑』の情報の充実を予定している。

「地方に住む人というと、排他的とか閉鎖的というイメージをもたれる人がいらっしゃるかもしれませんが、鯖江市民の方々は若い方たちや他地域から来てくださる人を本当に温かく迎えてきました。今回の『鯖江“育職住”プロジェクト』を通じて一人でも多くの方に鯖江市のことをよく知ってもらい、実際に足を運んで欲しいですね」(澤村さん)

『鯖江“育職住”プロジェクト』、そして新しい関係人口との取り組みはまだ始まったばかりである。

「私を含めて今回参加したプロジェクトメンバーと、鯖江の方々が一丸となって、これから鯖江の“未来”をつくっていけたらいいですね」(山本さん)

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