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  • 伝統文化の継承

担い手不足に悩む地域の祭りに入り込み、
ともに祭りを盛り上げることで、人と町を元気にする。

一般社団法人マツリズム 代表理事    大原 学

一般社団法人マツリズムメンバー/機械メーカー勤務    三木 祐史

掲載日2018年12月15日

人口減少や高齢化の波は日本の伝統文化である祭りにも影響を与えている。そんな祭りを地域と一丸となって守り、未来へつないでいる姿をレポートする。

参加ツアーとワークショップの開催を通じて
祭りの魅力を全国に発信するマツリズム

国内で数十万もあると言われている日本の伝統行事“祭り”。

全国的に有名な博多祇園山笠や青森ねぶた祭、さっぽろ雪まつりのように250万人から300万人もの動員を呼び込む大きな祭りがある一方で、開催地域の人口減少等による担い手不足によって祭りの存続が危ぶまれている地域も少なくない。

そのような状況のなかで一般社団法人マツリズム(https://www.matsurism.com/)は「祭りのチカラで人と町を元気に!」をビジョンとして掲げ、2016年11月から活動を続けている。

マツリズムの活動内容は主に2つが挙げられる。

●個人向けの祭り参加ツアー『Ma-tourism(マツーリズム)』の実施
地元の人々とともに祭りに参加し、歴史を学び、人と触れ合い、地域に混じる体感型プログラム。主に首都圏の若者や外国人を祭りに参加してもらうことで、祭りの人手不足解消と外部視点を得る契機を提供しており、これまでに10都県にて実施し、のべ30回・400名以上が参加している。

●祭りの担い手向けの『祭りワークショップ』の開催
祭りの担い手による祭りの魅力発信や、祭り運営に関する課題について多様な視点で考える場を提供している。年に一度開催される『祭サミット』をはじめとしたワークショップは、のべ9回開催され約160名が参加している。

大学時代から続く、祭りとの縁。
地域住民の「おかえり」の一言で団体の立ち上げを決意

「私は大学生の頃、サークルで『よさこい踊り』を始めたんですが、大学生活を送るなかで『自分は祭りに救われた』という想いがあり、それが現在の活動の原点になっている気がします」。そう語るのはマツリズムの代表理事を務める大原さんだ。

大原さんは就職を境に、祭りとの接点が数年程度途絶えていたが、2014年に大学時代の仲間が徳島に移住するのをきっかけに、徳島県三好市の『いけだ阿波踊り』の企画に参画し、改めて祭りの楽しさ、素晴らしさを体感したという。
それと同時に人口の減少に伴って祭りの担い手が年々減少し、祭りを継続することが困難な地域が多いことを知る。

「翌年再び三好の地を訪れ、地元の方々が『おかえり』と迎えてくれたとき、『この活動には価値がある。自分はこれを生業にしたい!』という思いを止めることができず、仕事を辞めてマツリズムを立ち上げました」(大原さん)

マツリズムを立ち上げた当初は、一個人として全国の祭りに参加し、祭りの場や酒席で「おもしろいやつがいるな」と顔を覚えてもらうことから始めたという。そうした地道な活動を続けるうちに、徐々にマツリズムの認知も進み、現在では地域の担い手と一体となって祭りを盛り上げる存在となっている。

「例えば東京都墨田区で毎年6月に行われている高木神社例大祭では、例年、上睦(むつみ)、下睦、四丁目睦の三睦が神輿を出しているんですが、このうち四丁目睦エリアは道路の拡張やタワーマンションの建設などで、一気に担い手が少なくなってしまったんですね。この四丁目睦でも最初はなかなか受け入れてもらうことができなかったのですが、3年目になって地域の重鎮の方から『死にかけていた祭りが蘇ったよ。ありがとう』という言葉をもらったとき、この活動を続けていて本当によかったと思いました」(大原さん)

今年は四丁目睦と共同でタワーマンションに住む近隣住民に向けて祭り参加に向けたオリエンテーションも実施された。「このように新しい担い手を受け入れるマインドが地域に醸成され、コミュニティが形成されていくことはマツリズムが地域に参画する大きな意義の一つだと思います」と大原さんは語る。

マツリズムと出会ったことで、祭りの楽しさを体感。
同時に自らの仕事への想いも再認識することに

機械メーカーに勤務する三木さんは、人材開発業務に携わりながら、マツリズムの活動に参加している。

「業務の一貫として社内のリーダー育成プログラムに社会起業家ワークショップを導入した際、講師として来ていただいたのが大原さんとの初めての出会いでした。当時、私は社員に向かって『社内に閉じこもらないでどんどん社会に出て行きなさい』と話しているにも関わらず、自分では何もしていなかったんですね(笑)。そんな折り、大原さんに東京都墨田区で行われている高木神社例大祭に誘っていただき、祭りにすっかり魅了されてしまったんです」(三木さん)

これまで祭りに参加したことのなかった三木さんだったが、自分でも驚く程楽しく、気付きも学びも深かったという。

「そこからはもう止まりません。熱海こがし祭り(静岡県熱海市)、いけだ阿波踊り(徳島県三好市)、釜石まつり(岩手県釜石市)と月に一度のペースで大原さんに同行し、3か月後には『マツリズムのスタッフにしてください』とお願いしていました(笑)」(三木さん)

三木さんは祭りと仕事には相通じるものがあるという。

「私は今の会社が好きですし、今まで人材開発やリーダー育成を自分の仕事として一生懸命やってはいましたが、『なぜ自分は会社が好きなのか。なぜ企業のリーダーを育てようとしているのか』をうまく言語化することができなかったんです。ところがマツリズムの活動を通して祭りに参加し、“自分自身が楽しむ”ことや“人々との一体感”を体感し、担い手の方々の気持ちに触れるなかで、『町やそこに暮らす人、そして祭りに対する愛着や愛情と、自分の会社の社風や社員、商品に対する気持ちは同じだな』と思えたんです」(三木さん)

「自分たちのやりたいことをやる、感情を解き放って個性で勝負する、自己効力感を高めるといったマインドは祭りでも仕事においても大切なことだと感じます」と三木さんは語る。

現在三木さんはこのような考え方のもと『Ma-tourism』を研修として活かせないか、プロボノを活用して『Ma-tourism』を盛り上げられないかなど、人材開発プログラムとマツリズムのマッチングの可能性を模索している。

難しく考えず、シンプルに楽しいことを続ければ
そこにコミュニティが生まれ、新しい可能性が広がる

最後に三木さんにとって複数の軸足を持つSmart Join Styleとはなんですか?と訪ねてみた。

「私は毎日をシンプルに楽しんでるんです。パラレルワークやパラレルキャリアという言葉もありますが、そんなに難しく考えず、楽しいことを続ければいいのではないでしょうか。マツリズムの活動では何も持たず身体ひとつで祭りに参加するだけで地域の方に喜んでもらえます。行けば必ず人とつながり、新しいコミュニティが生まれ、可能性が広がっていく。こんな魅力的なことはないと思っています。私にとってSmart Join Styleとは『自分の感情に素直に動くこと』ですね」(三木さん)

「マツリズムではどんな人にも、肩書きがなく、多軸で、自分が自分でいられる場所を提供していきたいと考えています。三木さんのような多様で多彩な軸足・視点をもったスタッフがいてくれることは、大変うれしく、マツリズムの未来が楽しみですね」(大原さん)

※文中の数値は2018年11月末日現在。

大原 学

1983年神奈川県生まれ。学生時代はチームスポーツに打ち込み、チームの「雰囲気づくり」や「一体感」の重要性に気づく。大学に入学したが、新しい環境に適応できず人生のドン底状態に。そんな時に祭りに出会い、あるがままの自分を受け入れてもらったことをきっかけに、諦めかけていた社会との接点を見出す。日本GE株式会社、NPO法人クロスフィールズでの勤務の傍、地方を巡る中で、地域に根付いた祭りの可能性に目覚める。2016年に退職し、一般社団法人マツリズムを設立。

三木 祐史

1979年大阪府生まれ。生命保険会社・人材系企業での営業職・マーケティング職・商品企画職を経て、2010年に現在の機械メーカーに入社。2015年より人材開発職として30代以下を対象とした次世代リーダー育成プログラムのプロジェクトリーダーを担当。2017年、高木神社例大祭にて生まれて初めての祭りに参加して以来、祭りに魅入られ、日本の伝統的な祭りを組織開発やリーダーシップ開発に活用していくことを模索する日々。現在取り組んでいるリーダーシッププログラムのテーマは「取り戻せ感情!解き放て個性!動き出せ社会へ!」

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