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  • 地域コミュニティづくり

自分の殻から一歩を踏み出し、複数の軸足をもって
活動を続けることが“ぶれない自分の軸”をつくる。

総合出版社勤務    川和 一隆

  

掲載日2019年01月15日

東日本大震災の経験と、尊敬する実父の病が、地域コミュニティの大切さを知るきっかけに。多様で多彩な活動から生まれる“ぶれない自分の軸”とは。

今回の『Smart Join Style』で紹介する川和一隆さんは、総合出版社に勤務する働き盛りのビジネスパーソンであり、2人の子どもをもつ父親という、ごく一般的な男性なのだが、驚くのはその経歴の多さと多彩さである。

自身が暮らすマンションの管理組合理事長、同自治会会長を歴任、早稲田大学大学院政治学研究科への入学、NPO法人一新塾入塾、さらには区議会議員の立候補とざっと挙げただけでもその活動は多岐にわたっている。

「『仕事の成功が人生の成功』と信じて疑わなかった私が、本業以外でこんなにもたくさんのことに挑戦することになるとは自分でもまったく思っていませんでした」と川和さんは語る。

東日本大震災の体験で
地域コミュニティとのつながりの大切さを痛感

東京都葛飾区生まれの川和さんは、幼少期を千葉県柏市で過ごしたが、結婚後2人目の子どもが誕生したのを機に、出身地である葛飾区金町に新築の分譲マンションを購入、2010年に家族とともに移り住んだ。

「新居に引っ越しをした翌年に東日本大震災が起こったんです」(川和さん)
2011年3月11日の東日本大震災発生時、川和さんは会社に居た。家族の安否確認は何とかとれたものの、当時は総務部に所属していたため、社屋全体の被害状況の確認や従業員の対応に追われ、すぐに自宅に戻ることはできなかったそうだ。

「同僚が自宅への帰路を急ぐなか、私は職務遂行のため震災当日は家に帰ることができませんでした。これまでは地域のコミュニティなどにはまったくの無関心だったのですが、『今後災害があったとき自分がそばにいて、家族を守ることができないときには、地域の方々に助けてもらうしかないのではないか』と思うようになったのです」(川和さん)

災害に強いまちづくり・ひとづくりを
行うための活動に尽力

当時近隣に知り合いがいなかった川和さんは、地域内に仲間をつくる第一歩としてマンションの管理組合に参加した。理事を務めた川和さんだったが、築2年目にして管理組合はさまざまな問題を抱えていたという。

「これでは地域の環境はもちろん、住環境もよくならない、みんなが仲良く楽しく暮らせるまちをつくりたいと考えた私は、ほかの理事の皆さんの薦めもあり、理事長になることを決意しました」(川和さん)

3期に渡り理事長を務めた川和さんは、就任中の2013年に実現させた夏祭りがとくに記憶に残っていると語る。

「これまでは専門の業者に委託し、小規模な祭りを開催していたのですが、『自分たちのまちは、自分たちの責任のもと、自分たちで守り発展させる』という考えに基づき、『子どもたちの思い出に残る、“自分たちの祭り”と思えるような夏祭りを住民の手で創ろう!』というかけ声で夏祭り実行委員を有志で立ち上げました。住民のみならず近隣の学校や飲食店、そして地域に暮らす芸人の方々にも協力いただき、夏祭りは大成功に終わりました。そのときに皆さんからいただいた無数の『ありがとう』の言葉が、今でも活動の原動力になっています」(川和さん)

冒頭でも紹介した川和さんの主な活動の一部を紹介しておこう。
・居住マンション自治会(725世帯)設立、初代会長に就任
・金町駅北口周辺地区まちづくり協議会理事 兼 プロジェクト部副部会長就任
・葛飾区防災モデル指定地区認定に寄与し、自主防災組織(現防災委員会)を設立、災害本部長に就任
・早稲田大学大学院政治学研究科入学、公共経営修士(MPM)取得。卒業後早稲田大学公共経営稲門会副幹事長就任
・NPO法人一新塾入塾。『Teamかなぼう』を立ち上げ、「つなげよう、金町防災プロジェクト」を推進
・葛飾区議会議員選挙に立候補
(順不同)

内容はさまざまだが、川和さんが行っているのは、そのすべてが「地域コミュニティを活性化し、家族を守ってくれる仲間や、地域の見守る眼を育み、災害に強いまちづくり・ひとづくりを行うための活動」につながっている。

「地域活動を始める前は自分の考えを他者に押し付ける利己的な人間だった気がします。それが約8年に渡る活動を通して、自分だけの満足を追求しても満足感が得られなくなってきたんですね(笑)自分の活動が誰かの役に立って、感謝の言葉をもらったときの方がより大きな充実感、満足感を感じるようになった気がします。自分自身も人として大きく成長することができたと思います。これもひとえに、苦楽を共にし活動してきた仲間たちのお陰であり、感謝の気持ちでいっぱいです。」(川和さん)

軸足を数多くもつことの大切さを
教えてくれた実父の存在

「何が自分をこうした行動へと突き動かすのかを考えてみると、そこには父の存在が見えてきます」(川和さん)

会社を経営し社交的であった実父は川和さんにとって尊敬する存在であり、また目標でもあった。その実父が病気をきっかけに仕事も辞め、現在はほぼ寝たきりの状態だという。

「父の背中を見て『仕事の成功が人生の成功』と信じて仕事を続けてきましたが、地域コミュニティとの関わりを持たず、会社経営以外の役割がなかった父は、退職後には自宅に籠もり、ほとんど外にも出なくなってしまいました。父のように軸足が“仕事”だけだとそれを失ったときに倒れてしまう。軸足をたくさん持っていれば例え1つを失っても倒れずにいられるのではないでしょうか」(川和さん)

東日本大震災の体験をきっかけに、地域と自分、そして家族との関わり合いの重要性に気付き、現在はそれをより強固なものとするため、川和さんは複数のコミュニティに自分の軸足を置いているのだ。

「『たくさんの軸足があると自分がぶれてしまうのではないか』と思う方もいると思いますがそんなことはありません。その先にこそ“ぶれない自分の軸”が見つけられると思っています」(川和さん)

川和さんは複数のコミュニティに軸足をもつことで、1つの居場所にしがみつく必要がなくなり、強く折れない心が養われたという。また、多様な価値観や考え方に触れる機会が増えるなかで、他者を認めて受け入れることができるキャパシティが自分のなかに生まれたそうだ。

自分の仕事を大事にした上で一歩を踏み出せば
自分自身の“ぶれない軸”が見つかるはず

本業以外に軸足をもち、「Smart Join Style」を実践することに二の足を踏む人もいるかも知れない。そんな人たちに川和さんにアドバイスを求めた。

「『恒産無くして恒心無し』ということわざがあります。これは一定の職業や財産を持たなければ、しっかりとした道義心や良識を持つことはできないという意味なのですが、まずは自分の仕事を大事にすることが前提です。その上で自分の殻から一歩を踏み出せば、世の中には自分の知らない楽しいこと、面白いことがたくさんあります。自分をさらけ出す勇気、異なる他者を認めて受け入れる寛容さ、自分の信念を信じて行動に移す大胆さ。これらをもち続けることが人それぞれの“ぶれない軸”を見つけるポイントだと思います」(川和さん)

川和 一隆

1972年東京都葛飾区生まれ、2児の父。明治大学政治経済学部経済学科卒業、総合出版社勤務。東日本大震災を機に地域活動に目覚める。【人をつなぐ、地域とつながる、未来へつなげる】をスローガンに地域の仲間たちと安全・安心で活気のあるまちづくり活動を実践。また、NPO法人一新塾では「Teamかなぼう」を立ち上げる。高齢者が孤立せず、若者が継続的且つ自主的に地域活動に参画する仕組みづくりとして、行政×地域×大学の連携・協働による防災まちづくり『つなげよう、金町防災プロジェクト』を推進している。

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